大英博物館が100倍楽しくなる見どころ紹介特集!③【大英博物館編】

第3章 西洋文明の源流・メソポタミア美術とは?

さて、人類最古の文明と言われている
メソポタミア文明について見ていきましょう!

メソポタミアは、古代ギリシャ語で
「複数の河の間」という意味です。

現在イラクの一部に当たるその地域は、
その名前のとおりたくさんの川が流れていて、
農業が盛んになったことで国が発展していきました。

この地域はさまざまな部族が侵略、支配を繰り返しているので
一概にこの人たちの文明だ、とは言えません。

一般的には、紀元前3500年から紀元前2000年ごろに
南メソポタミアを支配していたシュメール人による
シュメール文明が源流であると考えられています。

Room 55-56

古代メソポタミアでは、金属などの資源が得られなかったため、
基本的には日干しレンガや粘土といった素材が主流です。

一方で、金やラピスラズリといった鉱石は多く見られます。

初期王朝時代の王家の墓から
金やラピスラズリなど石で作られた
女性用のアクセサリーが発掘されています。

金やラピスラズリは、服飾に限らず
美術装飾にもよく使われました。

The Standard of Ur: About 2500 BC, Room 65

 画像引用:https://www.britishmuseum.org/collection/object/W_1928-1010-3

シュメール人の王が兵を率いている様子が描かれています。

古代文明といっても、
意外と精巧に作られているんですね。

そうなんです!
特に動物に関しては写実的な表現が多いのが特徴です。

モザイクなどのタイルを用いた装飾も
シュメール美術の特徴の一つですね。
(のちにアッカド人が侵略した時代のアッカド美術にも引き継がれています)

The Temple of Ninhursag

また、彩釉(さいゆう)レンガという
薬を塗ってレンガに色付けをする技法も
このころから使われていました。

この技法によって、レンガに色付けができるだけでなく
強度が増すというメリットもあったんです!

このようなモザイク技法は、
のちのローマ文明やキリスト教美術にも
取り入れられるようになります

モザイクってそんなに昔からあったんですね!

さてシュメール美術では、
創世記に関するメソポタミア神話や
ギルガメシュという実在した王様の英雄奇譚である
ギルガメシュ叙事詩の詩文を表している場合がほとんどです。

その物語で登場する動物がモチーフとして使われていることが
多く見られます。

Cylinder seal , 2600 BC – 2300 BC 

画像引用:https://www.britishmuseum.org/collection/object/W_1933-0408-1

シュメール人は楔形文字を使っていましたが、
シリンダースタンプと呼ばれる円柱のスタンプで
神への祈りを捧げたり
壺など、物の所有者を表すことが主流でした。

コロコロスタンプ!
子供のころ、よく集めてました!

今も昔も変わらない文化ってあるんですね!

こちらは神話の一部で、
神々と英雄のワンシーンが描かれています。

よく見ると真ん中には柵に捕らわれた人、
その両脇には蛇を持った人が描かれています。

直径2cm、高さ3.2cmのスタンプですが
精密に掘られていますね。

Ram in a Thicket About 2500 BC 

画像引用:https://www.britishmuseum.org/collection/object/W_1929-1017-1

続いて、餌を探しているときのヤギの像です。
こちらも金やラピスラズリ、
螺鈿細工によって装飾が施されています。

迫力がありますね!
・・・奈良の鹿を思い出します

さて、彫刻を見ていきましょう。
こちらは神々の像です。

メソポタミア文明では日本同様、
何百もの神々が信じられていました。
その神々の間には階級もあります。

宇宙によって引き起こされる自然現象(空気、太陽、水など)や
農業や学習といった技術面を司る神、
また愛や出産、病気など人生に関わるものを司る神などが
信じられていました。

シュメール人は唯一産出できた大理石で彫刻を作っていました。
この流れは、古代ギリシャ美術に引き継がれていきます。

彫刻は白い大理石っていうイメージがあったけど、
そういう背景があったんだ!

この像にも見られるように、
目がとても強調されていますね!
「目は魂の窓」とされていて、
像には神が宿ると信じられていました。
このカッ!と開いた目は、エジプト彫刻に影響を与えています。

確かに、エジプトの壁画や彫刻は
目力がすごい印象があります。

さて、先ほども触れましたが
シュメール人が信じていたメソポタミア神話には
大洪水の神話というものがあります。

これは旧約・新約聖書や古代ギリシャ神話の
洪水神話の元にもなっています。
ノアの箱舟やバベルの塔が代表的な例です。

バベルの塔!聞いたことがあります

高い塔を建てて神に近づこうとした
人間の高慢さに神様が怒って、
人間同士がコミュニケーションを取れないように
別の言語を話させるようにしたっていう話ですね!

よく知っていますね!

そのバベルの塔のモチーフとなったのが
ジッグラトと呼ばれるシュメール人の神殿です。

ジッグラトの形は
エジプトのピラミッドに影響を受けたとも言われています!

確かに、なんとなく似てますね

世界史的に見ると、
紀元前2000年頃はさまざまな民族が
メソポタミアやエジプト周辺で侵略・建国する動きがありました。

その後は戦争や交易を通じて、
お互いの文化が影響を与えあったのだと考えられます。

コラム〜粘土板が本!?アッシュールバニパル王の世界初の図書館〜

大英博物館は、世界最古の図書館と呼ばれているアッシュールバニパル王(668 – 630 BC)の図書館があります。
 粘土版に刻まれた「本」は、薬や文学、歴史に関する内容などさまざまな分野が所蔵されていました。
地上界で展示されているアッシリア展示室では、このアッシュールバニパル王のライオン狩りの活躍を表す壁画が展示されています。
時間がある方はぜひいってみましょう!

まとめ

  • エジプト美術の主なテーマは、死後の世界
  • エジプトの美術様式は3000年間ほとんど変わらなかった
  • ミイラ(ファラオ)にもパスポートが発行された
  • 古代文明の美術は写実的!
  • メソポタミア文明は西洋文明の礎

いかがでしたか?
古代文明の流れを実際に見ることができる展示室が盛りだくさんでしたね!
次回は、古代エジプト・メソポタミア文明の両方の流れを受けて発展した古代ギリシャ美術について詳しく見ていきましょう!


参考文献一覧

『大学4年間の西洋美術史が10時間でざっと学べる』 著:池上英洋 角川書店 2020年発行

時空旅人 2020年11月号 Vol.58

るるぶエジプト(2019年版)編集:米谷奈津子 2018年発行 JTBパブリッシング

参考ウェブサイト

Art Renewal Centre

https://www.artrenewal.org

古代エジプト美術館

http://www.egyptian.jp/top.html

メソポタミア美術

Livedoor News:ラメセス2世のパスポート

https://news.livedoor.com/article/detail/15381579/

Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/エジプト神話

https://en.wikipedia.org/wiki/Ramesses_II

Asahi shimbun

https://www.britishmuseum.org/asahi-shimbun-displays

https://www.britishmuseum.org/exhibitions/tutankhamun-reimagined

BM

Tutankhamun exhibition

https://www.britishmuseum.org/visit/object-trails/tutankhamun-ancient-and-modern-perspectives

Ancient Egypt 

middle age

https://www.britishmuseum.org/research/projects/molecular-analysis-ancient-egyptian-burial-residue

https://www.britishmuseum.org/research/projects/regional-identities-middle-egypt

1hour tour

https://www.britishmuseum.org/visit/object-trails/one-hour-museum

3hour tour

https://www.britishmuseum.org/visit/object-trails/three-hours-museum

(記事制作:Rena)


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